「死役所」は基本一話完結のお話です。
11巻では「裁きの先に」、「自責」、「ハロー宇宙人」の三話が描かれています。
死役所 11巻のネタバレ感想。
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「裁きの先に」
バイクに乗った男性がパトカーに追われます。
そのバイクは他の車と接触し、運転していた男性は道路に投げ出されてしまいました。
バイクに乗っていた男性は事故死します。
男性の名は「坂東一早」。
「交通事故死課」の担当職員「松シゲ」さんと総合案内係の「シ村」さんが坂東に事故にあった時の状況を尋ねます。
パトカーに追われて...事故死したのですから坂東は何かを「やらかし」たんですよね。
さて、何を「やらかし」たのでしょう。
実は「ひったくり」をして警察に追われていたのです。
しかし、坂東は高校の時以来、20年以上も「ひったくり」をしていませんでした。
家庭を持ち、金にも困っていなかった坂東がなぜ「ひったくり」をしたのでしょうか?
坂東は話し始めます。
坂東が高校の頃は仲間と悪ふざけをしてばかりの日々を過ごしていました。
「ひったくり」もしました。
それもただ「ゲーム感覚」でやっていたのです。
何度、「ひったくり」をしても警察に捕まることもなく「もしかしたら、一生働かずに」ひったくりで食っていけるかも
しれないとさえ思っていました。
ある日、坂東の家に祖父がやってきました。
祖父は、行ってみたいところがあるから電車の乗り方を教えて欲しいと言います。
坂東は道案内がてら、祖父と一緒に「行ってみたいところ」に行くことに。
祖父が「行ってみたいところ」とは「裁判所」でした。
祖父は裁判を「傍聴」したかったのです。
祖父と共に坂東も裁判を傍聴することになりました。
そして、この裁判が坂東にとって忘れられないものとなります。
その裁判は、カバンから財布が見えていて、つい手を出してしまった男性の裁判でした。
盗った財布の中身は「3000円」。
この財布の中身を見て男性は「もう、いいかな」と思ったそうです。
しかし、逮捕されてしまい、男は「割に合わない」と言うのでした。
この日以来、坂東は「ひったくり」を辞めました。
「犯罪なんて割に合わねーよ」
社会人になって、結婚して、子供も生まれてからも坂東の裁判「傍聴」は続いていました。
ある日、「強姦致傷」の裁判を傍聴する事になった坂東。
いわゆる、「レイプ」の裁判ですね。
レイプの裁判って被害者に「隙があったんじゃないか」とか「気持ち良くなったんじゃないですか」とか聞いてくる
らしいですよね。被害者なのに被害者に「落ち度」があるみたいな事を思わせる。
この裁判もそういう流れになっていくのでした。
しかも「裁判員裁判」でした。
坂東は裁判員の中にいる「小太りのおっさん」の事がなぜか気になるのでした。
裁判の内容は、被告人はイケメンの22歳の「医大生」で被害者の女性が公園のトイレに入ったところに「陰部」を
露わにした被告人の男性が入っていき、咥える様にと命じたのでした。
しかし、女性が口を開けなかったので男性は女性の顔を三発殴り、後ろから暴行したという内容でした。
しかし、この起訴内容に被告人の男性は「自分はフェラを要求していないし、同意の上のもので強姦ではありません」
と容疑を否認するのでした。
弁護人からも検事からも被害者の女性は心無い質問を浴びることになります。
そして、裁判員の「小太りのおっさん」から驚くべき質問が発せられるのです!!
「小太りのおっさん」は被害者の女性に「あなた、事件の時に被告人の顔見ましたか?男の僕が言うのも何だけど
ちょっとカッコいいと思いませんでしたか?」と言う所から始まり、さらに「この人ならまぁ、いいかって思いま
せんか?本当に嫌だったら抵抗して逃げられたと思うんですよね。被告人が医大生って知ってますよね?そんな将来
有望な若者を自分の不注意で潰しちゃうの勿体ないと思いませんか?」と言うのでした。
この「小太りのおっさん」の質問に憤りを感じた坂東は思わず傍聴席から「そいつは裁かれなきゃいけないだろ!!」
と叫びます。そして、「被害者は死ぬほどつらい目に合ってんだよ。勇気振り絞って警察に行って裁判してんだぞ。」
そして、被害者の女性に「あんたは悪くない!!絶対負けんなよ!」と言うのでした。
当然、坂東は強制退席を命じられます。
裁判が終わると、あの「小太りのおっさん」は何食わぬ顔で坂東の前を通り過ぎていくのでした。
「小太りのおっさん」はカバンを持っているのでした...。
坂東は20年ぶりに「小太りのおっさん」のカバンをひったくりしたのです。
「小太りのおっさん」に被害者の気持ちを味合わせたかった…それだけの理由から坂東は「ひったくり」をしたのです。
そして、自分が捕まったら裁判所で「本気で抵抗すればカバンなんて盗られませんよ。おっさんの不注意でしょ」と
言ってやるつもりだったのでした。
「割に合わない事しましたね」、そう坂東に言うシ村さん。
せっかく反省してるのに浮かばれないなと坂東を思う松シゲさんに対してシ村さんは「過去の罪は水に流したまま
です」と冷たく言い放ちます。
そんなシ村に「お前のいう事は正論だけど、愛が無い」と言う松シゲさん。
シ村さんは松シゲさんに「さすが加護の会信者ですね。」と言うのでした。
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「自責」
「癌死課」に禿げた足の悪い一人の男性がやってきます。
総合案内係のシ村さんに自分が小学校の時の担任の先生の事を聞きたいと言ってきました。
その男性の名は「猪股」。癌で亡くなられた男性でした。
猪股は小学校の時に友達と遊んでいた学校の屋上から落ちてしまいました。
その時の担任「印南清子」先生が骨折して学校を休めると喜んでいた猪股に激怒し涙を流して叱ってくれたのでした。
先生は「今、生きてることは奇跡なのよ。人間は簡単に死んでしまうものなの。死ねば、すべてが無くなり時間も
そこで終わる。それはとても恐ろしいことなのよ」と。
その年の瀬、猪股は母に、先生の所に「鯛」を届ける様にと言われ、学校へ行きます。
しかし、先生は昨日から体調が悪いといって学校を休んでいました。
猪股は直接、先生の家に行くことに。
先生の家に行くと留守のようで何度、先生の名を呼んでも応答はありませんでした。
ですが、家の鍵はかかっていません。
猪股はドアを開けて中を覗くと...先生は首を吊って死んでいました。
「きっと、先生は誰かに殺されたんです!」猪股はシ村さんにそう言いました。
命を粗末に扱ってはいけないと言っていた先生が自殺するはずないと。
シ村さんは「個人情報」を教えることは出来ないと断ります。
そしてこう言います。
「知らない方が良い事もありますよ。自殺の原因がご自身にあったらどうなさるおつもりですか?」
猪股は成仏の時を待ちながら「先生の自殺は俺のせいじゃない、せいじゃない」と震えながら呟くのでした。
「ハロー宇宙人」
女子高生の「智柚美」と「詩」は学校の屋上で何やら呪文を唱えています。
「今日も宇宙人、来なかったね。会いたいなぁ、宇宙人。」そう話すふたり。
ふたりは宇宙人に「別次元」に連れて行って欲しいのです。
詩が家に帰ると母と姉が仲良くおしゃべりしていました。
2人は詩が帰ってきたことに気が付かない様子。
次の日、元気のない詩に智柚美は「元気ないんじゃない?」と声をかけました。
詩は、あんな家にもう帰りたくないと言います。
すると、智柚美は「別次元」に行く方法があるから一緒にやってみようと言いました。
その方法って?それは「死ぬこと」でした。
「一緒に死んで宇宙人に会おうよ」そう言う智柚美に誘われて詩は死ぬことに同意します。
練炭を炊きながら、ふたりは手を繋ぎ「宇宙人に会えるの楽しみだね。ふたりなら宇宙人が怖い人でも平気だね」
...
その頃、死役所では誰かを探す一人の女子高生がいました。
それは「詩」だったのです。
総合案内係のシ村さんが詩に話しかけます。
「友達が来ないんです。一緒に死んだのに」と泣きながら言う詩。
そして詩は、智柚美は母親の彼氏に暴力を受けていて「死ぬ」事に対して自分よりずっと「真剣」だったことに
気が付きます。
死役所にやって来ない智柚美は本当に死んだのでしょうか...。
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11巻の感想
11巻の感想は毎回思う事ですが「うーん」と唸らせる内容ですね。
どの話にも共感と皮肉さがあって素晴らしいと思いました。
特に長い内容だった「裁きの先に」はレイプ裁判のリアルさが描かれていたと思います。
本当に「小太りのおっさん」みたいな価値観の人っているんですよね、きっと。
それが私にはとても「恐ろしい」のです。「小太りのおっさん」の言ってる事が恐ろしいのではなく私の考えの
及ばない考え方があると思うのが恐ろしい。
自分の思う「正義」ってなんだろう。もしかしたら、「小太りのおっさん」の考え方の方が「一般的」だったらどうしよう
そんな事を考えてしまいました。
そして、気になるのが本作品の主人公「シ村」さん。
彼の過去が毎回ちょっとずつ現れていますね。
その中でも気になるのが「加護の会」。
12巻の予想としては「加護の会」についての「死」が出てくるかなと。
そして、それがシ村さんの過去とどう繋がっていくのかが少しづつ描かれていくのではないでしょうか。
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