漫画「セルフ・ネグレクト~ゴミ屋敷、ホームレス、ひきこもり」は榎本由美先生の作品です。
一話完結で共通しているテーマは「自分で自分を追い詰めて破滅していく」女性達の姿を描いた作品です。
セルフネグレクト(漫画)ネタバレ3話。美緒は何故ひきこもりに?
さて、今回は「3話」の主人公「ひきこもりを30年続けた女」の物語。
30年ひきこもり続けた女性の名は「田南美緒」48歳。
彼女は今、葬式に出席しています。
誰のお葬式かって?
それは、彼女の「母親」の葬式です。
ブクブクと太った美緒は、葬式の途中で突然立ち上がり、奇声を発します。
明らかに普通の様子ではない美緒に参列した人々は引き気味。
中でも、実の弟妹が一番美緒に引いていましたね。
そもそもどうして、美緒は引きこもりになってしまったのでしょうか。
それは、30年前...彼女の学生時代まで遡ります。
生まれた時から「ひきこもり」のはずもなく昔は普通の少女だった美緒。
普通でなくなるきっかけは美緒が高校受験で第一志望校に落ちた時からでした。
受験のストレスと落ちたショックで美緒はこのころから太り始めてきます。
拍車をかけたのは美緒の妹「優香」が美緒の落ちた高校に受かった事でした。
美緒はこの出来事が決定打となって「ひきこもり」になるようになりました。
父親はなんとか、美緒を表に出そうと努力しますが母親は美緒をかばいます。
進路に関しても、
「あの子は通信制の専門学校に行くつもりなのよ」
と美緒のその場限りの言葉を信じてひきこもりを容認するのでした。
昼夜逆転の生活するようになる美緒。
これって、完璧に「ひきこもり」パターンなんだそうですね。
昼夜逆転して、生活のリズムが狂っていく...心のバランスも同様に狂っていく。
同じ家に住みながら家族と顔を合わせない美緒。
そんな美緒に母親はせっせと部屋の前に毎日食事を置いていくのでした。
ひきこもりを続ける美緒に父親は怒りますが母親は、
「きっと、勉強してるのよ」
そう言って美緒をかばいます。
母親の優しさに甘えているのか、それとも気が付いていないのか、母親が運んできた
食事にも「煮物はいらない。唐揚げに変えて」というメモで文句を言う始末。
さらに、「パソコンが欲しい」と言い出す美緒。
父親は美緒にパソコンを買い与えるのを反対しますが母親は、
「勉強にパソコンは必要」
と言って、買い与えてしまいます。
これによって、ますますひきこもる美緒。
「パソコン」のおかげでより一層外に出る必要性が無くなった訳です。
やがて、妹の優香が結婚することに。
結婚式に招待したにもかかわらず、
「出ない。優香だって迷惑でしょ」
と言って、部屋から出てくることはありませんでした。
そんな美緒に優香も弟に「祥吾」も呆れます。
そして、そんな美緒を必死にかばい、世話をする母親にもっと呆れるのでした。
「お母さんと共依存だからね」
と分析する優香。
確かに、母親は美緒の面倒を見るのを喜んでいる様にさえ見えます。
いつまでもあると思うな親と金...
とは、よく言ったもので父親が脳梗塞で倒れ、お亡くなりになりました。
「家から出たくない」という美緒の為に、自宅で葬儀をするという母親。
妹たちはそんな母に怒りますが数年ぶりに目にした美緒の姿に驚愕します!
ブクブク太り、虚ろな目をした美緒がそこにいました。
「バケモノ...」
このままだと「マズイ」と心配する妹たち。
妹の優香はとうとう母に、
「あの人は世の中のこと何も知らない、仕事も出来ない、何も生みださないバケモノよ!!」
と言います。
しかし、母親は妹の心配をよそに、その後も自分の介護が必要な状態になっても美緒の世話を
し続けるのでした。
そして、その時がやってきます。
ゲホゲホと咳をして、そのまま起き上がらなくなった母...。
お腹がすいて2階から降りてきた美緒は動かなくなった母に気づきながら、自分の部屋に戻り、
「お母さんはきっと大丈夫よ。すぐに起きてご飯を作ってくれるわ...」
そう自分に言い聞かせ、布団に潜り込んで震えているのでした。
翌日、
「お姉ちゃん!お母さんが死んだわ!」
と優香。
「なんで一緒に住んでいながらお姉ちゃん、気が付かないのよ」
そう呟くのでした。
母の死後、妹たちは実家を売り払い、美緒をアパートに一室に押し込みます。
母がいなくなった今、美緒は一人で生きて行かなければなりません。
だけど、彼女はご飯を作ることも、薬を飲むことすらできなくなっていたのでした。
セルフネグレクトの3話の感想
3話の感想は、読んでいて怖くなりました。
どうしてかと言うと、あまりにも「美緒」とそっくりな人を知っているからです。
私の友人の「義姉」がまさに「美緒」でした。
私の友人が結婚した時、ご主人のお姉さん、つまり義姉は引きこもっていて友人は会った事も無かったそうです。
舅が亡くなった時でさえ、姿を現さなかったのだとか。
姑に認知症の症状が見え始めてきた頃、友人は心配して一週間に一度は様子を見に行くことに。
この頃、姑と義姉のふたり暮らしだったそうです。
一週間ぶりに訪れた時、友人が目にしたのは!
姑の亡くなっている姿だったのです。
死後、8時間くらい経っていたそうです。
警察を呼んで事情聴衆される友人。
そこにやっと、義姉が登場。
ご飯を運んでこないことに不審を抱いた義姉が部屋から出てきたのです。
そこで、初めて義姉と対面した友人。
結婚して20年が経っての対面でした。
姑が亡くなった事を認識しない義姉は、
「母ちゃん、なんでこんなところで寝てんだ?」
と言ったそうです。
警察の人は義姉を見て、「頭おかしいんですか?」と言ったとか言わなかったとか。
今も生家で暮らしている義姉。
友人とご主人は、二度と生家に行くつもりはないそうです。
今頃、義姉は一人でどんな暮らしをしているのでしょうね...。
私の持論としては生活の余裕のある人しか「ひきこもり」になれません。
なんだかんだ言って美緒が30年も引きこもれたのは母親のおかげでもあり、母親のせいでもある。
同情もしないし、特別不幸な人だとも思えないな、美緒に関しては。
何もできない状態で独りぼっちになった美緒ですが、結構面白可笑しく生きてるかもしれないし。
あの義姉だってきっと...。
一話完結の「セルフ・ネグレクト」の予想は非常に難しいのですが次は「ギャンブル依存症」とか
「アルコール依存症」、「セックス依存症」の女性たちがテーマになるんじゃないかと勝手に予想しちゃう私です。